一人用の肘掛け椅子に深く腰かけた主は、秀麗な顔にふと影を落とした。ネリーは一瞬怪訝に思ってから、ああソフィーがいないからか、と納得してくるりと背を向けようとした。自分も彼女のもとにいかなくては。 「ネリー」 そんな風に踵を返したネリーの背に、静かな声が届く。きょとん、として振り向くと、フィンレイはこちらを見もせずに続けた。 「ネリー、おまえは大丈夫か」 ……なんの話だ。 よくわからずに沈黙して、数秒後にこの前の大騒動のことだと理解する。あれは半分彼の置き手紙のせいだった気がしないでもないが、それは散々怒鳴り散らしたので、ネリーは素直に頷いた。 「はい、問題ないですよ」 「そう」 それっきりまた彼は押し黙った。 そんなで用は終わりかと首を捻った時、フィンレイの長い指がくいっと動いた。こっちにこい、ということか。 のんびり近づくと、不意に返す指でヘッドドレスから零れた髪を引っ張られた。ぐ、痛い。嫌そうにしても彼の指は止まらない。そのままするりと髪を降ろされる。 「……フィンレイさ、」 「……君が、無事で良かった」 そっけなく、けれども押し殺すような声だった。ネリーはひゅっと息を呑み、苦虫を噛み潰すような顔になる。ああ。 ずっと、ただの兄馬鹿でいてくれれば良いものを。 たまにこういうことをするから、この男は嫌なのだ。 めちゃくちゃみじかい。これ書いたときのわたしはほんっっっと主役カップルおいてこのふたりのなんともいえない空気に勝手に妄想ばくれつしていたのでしたった……今でも萌えるぜ…… |